SKED 我が国の魚類生産を支える黒潮生態系の変動機構の解明

The Study of Kuroshio Ecosystem Dynamics for Sustainable Fisheries

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白鳳丸西部北太平洋航海航海報告(KH12-3)

白鳳丸航跡(KH12-3)

2012年7月6日から8月14日に行われた白鳳丸航海「新しい海洋区分の創設に向けた生物地球化学と生態学の統合研究(IMBER航海)」に、SKEDから齊藤宏明、西部裕一郎(水産総合研究センター)および福田秀樹(東大大気海洋研)、鈴木研究室(北大)から杉江恒二、田中祐太が参加しました。

この航海では、①植物プランクトン群集構造と生理特性(杉江・田中)、②動物プランクトン群集構造と摂餌・生産特性(西部・齊藤)、③粒状生元素濃度および形状(福田・齊藤)、④有機物の鉛直フラックス(齊藤)、⑤海水の光学特性(齊藤)、に関し、黒潮を横切る測線および西部北太平洋を南北に横切る測線(図1)において観測研究を行いました。

航海は天候に恵まれ、順調に観測を行うことができました。

亜熱帯域を航行する白鳳丸

採水作業

植物プランクトンや懸濁物の採集にはCTD多筒採水システムが用いられます。

KH12-3航海では、海底直上から海面までの31層で海水試料を得て、様々な分析に用いました。

CTD観測

黒潮域や亜熱帯海域では、非生物懸濁粒子であるデトライタスが、物質循環および食物網動態の中で重要な役割を果たしていると考えられています。その物理・化学特性は形状によって大きく変化しますが、通常の採水・濾過による採取ではその形が変化してしまいます。そこで、現場海洋でのデトライタスの形状を明らかにするため、3次元ホログラフィー画像解析システムを用いた観測を行いました。この装置は、壊れやすいデトライタスの3次元構造を、レーザーを用いた光学解析によって明らかにすることができます。

3次元ホログラフィー画像解析システム

画像解析によりデトライタスの分布とその形状を調査した福田博士(途中寄港地のポンペイ島沖にて)

魚類仔稚魚の主要な餌料生物である動物プランクトンは、最大8つの異なる深度からの採集が可能なVMPSネットや、大型のORIネットを用いて採集しました。

VMPSネットの回収作業

デトライタス食性動物プランクトン
Oncaea(図上部)を調べる西部博士

西部博士は、デトライタスを捕食する動物プランクトンであるOncaea属について、VMPSネットのサンプルを用いて鉛直分布構造を調べるとともに、その摂餌行動や産卵生態を船上での飼育実験によって調べました。

ポンペイ(ミクロネシア共和国)
に寄港

ポンペイの風景

海洋表層で植物プランクトンによって生産された有機物は、様々な生物過程を経て、その一部が深層に輸送されます。この輸送量を調べるために用いるのが、セジメントトラップです。

セジメントトラップは、3つの深さに設置し、深さと共に変化する輸送量や、沈降粒子の組成を調べました。

セジメントトラップの設置作業。手前は齊藤プロジェクトリーダー。

セジメントトラップで採集された沈降粒子。様々な形の動物プランクトンの糞粒が見える。

セジメントトラップの設置作業

プランクトンの採集風景

乗船調査員